青春を取り戻せ!
翌日、僕らは赤坂の料亭にいた。

船に乗った豪華な刺身の盛り合わせが出されていた。

この前の中華料理とか、銀座のお店について彼は尋ねてきたが、女性のことには触れてこなかった。流石(さすが)にマナーを心得ていると思った。

僕は平目の刺身に舌鼓を打っていた。

「先生、どうぞ」

彼がとっくりを傾けてきた。

「ありがとう」

彼はそれを注ぎながら、
「先生のご発明の利権争いに私の会社にも一枚加わらせていただきたいのですが」
と、世間話の続きのような口調で、唐突に言ってきた。

一瞬虚を衝(つ)かれ、動揺がおちょこに伝わり、酒が少しこぼれた。

次には歓喜しながらも、平静さを装い、曖昧な返事を何度か繰り返した。

「先生の御発明はノーベル賞ものの素晴らしいものだということは知っております」

「ノーベル賞はオーバーだよ」

「いいえ。そんなことはありません。全人類にとってはそれ以上の物です」

「君にとってはの間違いじゃないのかね?」

「ワッハハ!先生には駆け引きは通用しないようですから、ザックバランに言わせていただきますと、何とか20億円用意いたしました」

「君、常識を知らないようだね?他の会社がいくら用意してるか教えてあげようか?」

「知っております。ある会社では40億だすことも、
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