青春を取り戻せ!
彼はしばらくの沈黙のあと頷(うなず)いた。

「はい。すぐは無理ですが、1ヶ月ほど待っていただければ」

僕の目を見つめたまま、手を差し出してきた。

僕は彼の目に引き寄せられるようにその手を握った。彼は左手も添えると力を強めた。


僕は柳沢に連絡をとり、会社設立屋をやっている彼の友人とのコンタクトをお願いした。

翌日、彼と一緒に指定の喫茶店に行った。

僕らの前には意外にもスマートにスーツを着こなした、首の異様に太い、銀縁メガネを掛けたインテリそうな男がいた。

柳沢とは以前一緒に仕事をしていた仲間だということだった。何の仕事とは聞かなかったが、…恐らくサギだろう。

その男はメガネの奥から上目使いで、鋭い目付きをさらに鋭くして太い声を出した。

「依頼人や知人の印鑑証明を使って、まず、法務局で有限会社の設立を登記するわけだが、会社の名前は何にする?」

「ええと、アジア衛材なんかいいと思うんですが?」

と言って、僕は紙にその字を書いた。

「なるほど、(有)アジア衛材か。…いい名だ。しかし、これも法務局で同じ名前がないか調べなくてはならない」

「はい。お願いします」

「うん。それから、適当な事務所を借りなければならない。まぁ予算がなければ駐車場でもいいがな」

「えっ、駐車場でも大丈夫なのですか?」

「あぁずいぶん駐車場だけの会社を手掛けてきたよ。
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