青春を取り戻せ!
スネークホール
僕は白木の会社に出向いた。
驚いた。
7年の歳月の間にすっかり変わっていた。
昔の本社の裏にあった小さな山は跡形もなく消え、そこに鉄筋コンクリートの7、8階はある白いビルが悠然とそびえていた。その側面には人間の輪郭の中に赤と青で動脈と静脈だけがデェフォルメされた、多分、生体科学製薬のマークが、遥か彼方からも見えるように大きく描かれていた。
もし、僕がここに初めて来たなら、太古の昔からあった栗とキノコのよく採れた小さな山の存在などこれっぽっちも気付かず、高くそびえるその白いビルが大古の昔からあったと言われれば鵜呑みにしていただろう。
一流ホテルを連想するような屋根のある正面玄関に車を横付けにし、二重にある自動ドアを通過した。
すると、無人だと思われたフロントから突然、
「いらっしゃいませ。生体科学製薬会社にようこそ」
という無機質的な声が聞こえてきた。
まわりを見回した。やはり誰も居ない。ただ、エレベーターの横の受付けと書かれたデスクに、マネキンが一人座っているだけだった。
「どちら様でしょうか?」
再び機械的な声が聞こえた。そのマネキンの下唇が器用に動いたのがわかった。
「どのようなご用件でしょうか?」
またまたマネキンを少しばかり改良したようなチンケなロボットの口が上下した。
声の正体がわかって余裕ができた僕は、それに返答した。
「強盗に来ました」
「ようこそいらっしゃいました」
思わず笑った。