青春を取り戻せ!
無機質なエンジン音とは明らかに違うが、何故かそれ以上に無機質的に感じられる悲壮感の漂う声が、初秋の夜の澄んだ空気を震わせた。
ボンと優紀の顔を交互に見ると、車を発進できなかった。
「ボンの自主性に任せるか」
「ウン」優紀は弾んだ声で返事した。
後部座席のドアを開けた。
ボンはシッポをプロペラのように回し、ヘリコプターのように飛び乗った。
車は静かに発進した。 ――― 幸福に向かって。 ――― いや、そのはずだった……。