青春を取り戻せ!
僕は事態を把握できずに、ただ口を開け、そのくたびれたスーツ姿の男たちを顧みた。
「板倉達郎だね」
「えっ!?はい」
不意を突かれ、思わず返事をしていた。偽パスポートの名の高橋貢は、頭から飛び去っていた。
「詐欺及び強盗の罪で逮捕する」
右側にいるハンチング帽を被った、浅黒い顔に深い皺を刻み込んだ男が低く威圧感のある声を出した。
もう一人の岩のような体格の若い男が、目の前に黒い手帳を押し付けるようにかざした。
「ひっ人違いです。僕は、高橋貢です」
「もう遅いよ。写真も出回ってんだよ」
ハンチングが確信に満ちた声を出した。
一瞬、絶望と恐怖が頭の中を渦巻き、眩暈に襲われた。
「しっかり立つんだ」
両側から吊られるように支えられた。
白木たちが自分の罪をかえりみず、金とダイヤ惜しさに告発したのだろう。予想もしなかったことだ。
(何て馬鹿な事を!?)
(それとも、勝算があるというのか?……まさか!?)
「ほらっ、バックをしっかり掴め」
「そのまま、ゆっくり歩け」
脳裏に、苦しかった刑務所時代がコマ送りを見るように鮮明に再現された。
(あそこだけには戻りたくない!)
「さっさと歩け」