青春を取り戻せ!
優紀の姿は見えない。きっと逃げ延びてくれたに違いない。

ボンだけはまだ飛び跳ねるように付いて来る。

ボンの身が心配になってきた。

しかしよく見ると、様子がおかしい。僕が危機に陥っているというのに、はしゃいで見えた。 シッポを振り、戯れるように付いてくる。………昔のボンなら、自分の身も顧みず、刑事たちに挑んでいっただろう。 状況がわかっていないのか。それとも焼きがまわったのか。

ボンがハンチングの足に擦り寄った。

ハンチングはボンに蹴りを放った。

「キャン」
と、ボンは一瞬飛び退いたが、次の瞬間にはシッポを振り、またしてもハンチングの足にまとわりついた。

その時、右奥のコーナーから制服の警官が二人、散歩をしているような気楽な足取りで現れた。

僕は叫び声を張り上げた。

「助けてくれ!!強盗だ!!」

制服の警官が振り向いた。

次の瞬間、僕は渾身の力で両脇の刑事に肘打ちを…。

「イテッ!このやろう!」

……べつに僕は狂ったのでも、取り乱したのでもない。計算があってしたことなのだ。

「おまわりさん!助けてー!!」

と、僕は叫ぶと、腕を振りほどき、制服の警官に向かって走った。制服たちも僕に向かって…。

「あの二人です、トランク強盗は!」

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