青春を取り戻せ!
僕は刑事たちを指差した。

若い刑事は何を思ったのか、まるで逃げるように逆の方向に駆け出した。

ハンチングもトランクを吊りながら若い刑事に続いた。

「待ちなさい!」

警官たちは彼らを追って行った。

刑事たちは挙措を失ったように出口の方向に走って行く。

若い刑事が転がりながら出口を通り抜けた。

その見苦しい格好は、まるでシャチから逃げ惑うアザラシのようだった。

ハンチングのほうは出口の手前でトランクを放り出すと、情無い声を張り上げて若い刑事に続いた。

「待てー!!」

つづいて二人の制服警官がドアに…。

僕は深い溜め息を吐くと、その場に座り込んだ。

優紀がトランクを引いてきた。…どうやら陰で様子をうかがっていたようだ。ボンは弾むように優紀を出迎えに行った。

僕は思い切って賭けに出た。

…ボンの様子を見ていると、どうしても不可解に思えた。
…初めて会った人間に媚びを売るボンではない。刑事はボンと顔馴染みと思えた。それも、かなり親しい………。

一番自然に考えられるのは、二人の男は刑事ではなく、白木のところの使用人かボディーガードということだ。
つまり、白木の命を受けた手先で、僕の昔の写真でも持たされ、昼夜ここで張っていたのだろうと推理できた。
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