青春を取り戻せ!
裁判
裁判は、起訴状朗読から始まった。
我慢ならない内容だったが、それははじめから覚悟していたことだ。比較的落ち着いて聞けた。
罪状認否、冒頭陳述、証拠調べと移り、検察官から沢山の質問が浴びせられた。
しかし何一つまともに答えられなかった。
「わかりません」と「知りません」の繰り返しだった。
僕は自分で言っていながら情無かった。
…これではオウムのほうがまだましだ。
わずかに人間らしく答えられたのは、僕は無実で、殺された女との接触は完全に無いということだけだった。
…冒頭陳述からつづいて裁判官の心証を悪くしたのは確実と思われた。
いよいよ弁護側からの証人である白木未美が証人台に呼ばれた。
僕は彼女に優しい笑みを投げた。
彼女がこわばった顔に一瞬笑みを浮かべた気がした。
…相変わらず綺麗だと思った。
彼女に心配や面倒を掛けてすまないとも思った。
(そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。ズバッと真実を、女の殺された時間に二人は会っていたと言うだけで、君は緊張から、僕は言われの無い罪から開放されるんだよ)
裁判長が重々しい声で未美に宣誓を催促した。
彼女はたどたどしく、
「…良心に従い、本当のことを述べ、無いことをつけ加えたり、有ったことを隠したりしないことを誓います」
と、夢遊病者のように宣誓書の文句を読み上げた。