青春を取り戻せ!
若大将は心細かったのだろう。ナワバリ外の所で、しかも友達は帰って来ないし、……またボンのことをダブッて考えはじめていた。

「…おじさん、早く帰ろうよ。おなかすいたよ!」

「アッ!?うん。どこかでハンバーグでも食べて行くか?」

「今何時?」
「…6時だよ」
「じゃ駄目!」
「そうか?ママに怒られるもんな」

「て、いうか、…テレビのダイフク・マンが始まっちゃうもん」

僕は彼らを最初の図書館の広い駐車場で下ろした。

少年は自転車にまたがり、片手を振った。


夕焼けの中をふらふらと倒れそうになりながら一生懸命に自転車をこぐ少年と、跳ねるようにつづく若大将が、オレンジ色のシルエットを作っていた。
それが昔見た童話のさし絵の中の”笛を吹く少年とネズミ”を連想させた。

彼らの影が見えなくなるまで見送った。

いつの間にか彼らに失われた時間を託しているのに気付き、自分の老を感じ、苦笑した。

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