【BL】偽りの愛


「………そんなわけない。調子に乗るのもいい加減に――」
「毎晩毎晩あんなに見つめられて気付かないわけないだろ。」

腕を掴む力が更に増した。


「だから違っ」
「逃げるな!どうして最初から諦める?あの夜だって、あんな言葉で誤魔化して、本当は愛されたかったんだろう?」
「――!」
「何をそんなに怖がるんだ?何がお前を臆病にさせる?」


何が……?



「そんなの決まってるだろう……。僕が男だからだよ!本気で相手にされるわけない。今までだって、そうだった。これからもそうだ。所詮は一夜だけの夢に過ぎないんだ。」
「………」
「だから本気になんかならない!どうせ傷付くのは、分かっているんだ……。」


本気になる前に逃げるんだ。

境界線は越えないように。一夜だけの温もりを求めて。


「……考えないのか?」
「?」
「どうして俺がこの店に入り浸っていたのか。どうして誰の誘いにも乗らないのか。どうして……お前の誘いを受けたのか。」
「ぇ…」
「ずっと待っていたんだ。お前が俺に声をかけてくるのを。」




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