【BL】偽りの愛
こいつが僕のことを好き?
そんな、あり得ない。
あり得るわけない。
「やっぱり、嘘だ。」
「あ?」
「だって何で僕なんかを…」
小さく舌打ちが聞こえた。
それから彼が顔を近づけてくる。
「気持ちのないキスは嫌だと言ったな。これが気持ちのあるキスだ。」
その瞬間、唇が重なった。
次第にそれは激しさを増した。
呼吸さえも奪われてしまいそうな感覚に、溺れそうになる。
唇が離れても呼吸は乱れたまま。
「どうだ?少しは信じる気になったか?」
「………」
「何ならもっとしてやろうか?」
「も、もういい!」
ぐいっと腕を伸ばして、彼と距離を取る。
「顔赤いぜ。ちゃんと伝わってるじゃねーか。」
「うるさい。」
「ふっ……。なぁ、名前教えろよ。まずはそこからだろ。」
偽りから、本当になるまで、あともう少し。
――end――