【BL】偽りの愛
そう思っていたら、彼はまた声を掛けられて、それを断る。
その様子を見ていたら、また目があった。
瞬間、彼は笑った。
僕は慌てて視線を逸らした。
ヤバい、絶対ヤバい。
――捕らわれる。
再び彼の方を見れば、いつも通りのつまらなそうな顔で酒を煽っていた。
僕はグッと手を握った。
期待はするな。
期待して傷つくのは、自分なんだから。
僕は立ち上がって、彼に歩み寄った。
彼は僕に気付くと、黙って視線を流した。
「愛なんてものはいらない。ただ抱いて欲しいだけ。」
彼は瞠目した。
そして喉で笑う。
「変な奴。いいぜ、気に入った。抱いてやる。」
彼は立ち上がった。
僕はその後に続いて店を出た。