【BL】偽りの愛
あの日から1ヶ月が経った。
あれからバーへは顔を出していない。
悪いことをした訳じゃない。
ただ彼に会うことが怖かった。
バーの近くまで来ては、引き返す。
それを何度となく繰り返していた。
今日も入口の前まで来て、足を止めた。
このドアの向こうに、彼がいるかもしれない。
そう考えると、胸が苦しくなる。
怖くなる。
「………帰ろう。」
独りでに呟いて、踵を返した。――瞬間、
「――捕まえた。」
突然、腕を引かれた。
振り返った先に居たのは、店の入口から出てきた笠井 慎だった。
「やっと捕まえた。」