【BL】偽りの愛


そう言った彼は、にやりと笑った。


「なっ……離せよ。」


腕を振りほどこうとしたけれど、見た目以上に力が強く、叶わなかった。


「どうして連絡してこなかった?」
「どうしてって……別に、理由なんてない。」
「ふーん。じゃあどうして店にも顔を出さない?」
「別に気分が乗らなかっただけだ。関係ないだろう。」


自分の口振りがイラついてしまっているのが分かる。


どうしてこんなにイラつくんだ……。


「逃げただけだろう?」
「は?」
「俺から逃げていただけだろう?」



ああ、分かった。

こんなにイラつくのは、


「そんなわけ……」
「お前、俺のこと好きだろ。」



こいつが図星をつくからだ。



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