憎しみという名の恋 ~光と影~
俺は小走りで彼女に追いつく。
後ろから傘を差してやると、闇風はゆっ
くりと振り向いた。
「っ!?」
闇風は俺の顔を見た途端、分厚い眼鏡の
外からでも分かるほど、大きく目を見開
く。
「よっ!お前傘忘れたの?」
俺が声をかけると目を泳がせてあからさ
まに動揺する闇風。
「お前、部活入ってないよな?なんでこ
んな時間にいるんだ?」
闇風は視線を斜め下に向けて、ゆっくり
口を開いた。
「あの…、影山くん?ですよね。」
「!」
初めて聞いた闇風の声は驚くほど小さく
震えていて、何年も出していないような
そんな声だった。
でも、透き通っていて可愛らしい声だ。
「俺の名前、知ってたんだな…!」
「あ、えっと…、かなり噂になっている
ので…」
そう苦笑いで答える闇風。
失礼だが、俺は初めて、俺の追っかけ共に感謝したと思う、…うん。
苦笑いだったけど、いつも真顔の彼女の違った顔を見られて少し嬉しかった。