シャンゼリゼ
「別に今晩どうこうしようとか思ってないから固まんなよ。もちろんお望みなら応えるけど?」
「け、結構です!」
咳が治まり、橋くんが離れた。
それでもさきほどより距離が近い気がして緊張する。
「てか本当に気づいてなかったの?」
「き、気づくも何も…ねぇ」
「へ―」
なんか橋くんの返答が冷たい。
「うわ―、これ本当美味しい」
会話の流れが止まって話し掛け辛くなったから、私の独り言が多くなる。
「そんなに美味いんだ」
「うん!」
橋くんがこたえてくれたのにほっとして、私は上機嫌で頷いた。
─と、
「じゃあちょっと頂戴」
私のグラスに口をつけた橋くん。
私は無言で赤面する。
「俺のもよかったら」
そう言ってジントニックのグラスを私に近付けた。
橋くんのグラス!?
でも…ジントニック飲みたい!