シャンゼリゼ
「えっ、と」
「話あるんなら立ったままも面倒だから、奥で」
部屋を指した彼の手にはレジ袋が握られていて、コンビニ行って来たんだなんて思う。
促されて再度部屋に入った。
「…」
「…」
相太の部屋は学生の一人暮らしの割には贅沢な部屋で(リビングだけで十畳)、広々としている。
さっきまでこの空間に一人だと孤独と焦りが強かったのに、今は威圧感で充たされている気がしてならない。
だってこの人、なんか恐いオーラもってるんだもん!!
「…あの、相太ってバイトですかね?」
「俺は知らない」
「ちょっと前に電話したんですけど出なくて」
「ふーん。飲む?」
ガサゴソと袋から取り出された飲み物に、一瞬悩む。
右手にビール、左手にノンアルコールチューハイ。
お酒が好きなんだけど初対面の人の前で酔うのはまずいと理性が働き、左を選んだ。
(ビールぅうう…)
希望としては今頃、相太と二人で飲んでいたかったのに。
なぜか今、見知らぬ人の前でノンアルコールを口にしている。
飲み物をくれたのは気遣いだろうし、もちろん有り難いんだけど。
(き、気まずい)