シャンゼリゼ



彼女は、


「後悔はしてないし。馬鹿にすんな」


微かに目を赤くして言った。


その言葉の真意を知る権利が、俺にはもうないんだと悟った。

ただ、自分の情けなさを客観的に感じていた。


────


彼女がタクシーで帰宅し、俺と橋が残った。


「お茶飲むわ。相太いる?」

「さんきゅ」


ひとまず喉を潤して一息つく。


「…修羅場ではなかったよな。説教部屋みたいな感じだった」

「菅居すごかったな。なりふり構わずって感じ」


橋が珍しく笑ってる。

それが馬鹿にした笑いではないのはわかっていた。


「…振られた」

「お前馬鹿だろ。一ヶ月も帰らないで被害者面すんなよ」



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