優しいカレの切ない隠し事
夜風が気持ちいい。
バルコニーから見える夜景を、本当は圭介と見たかったのに。
「圭介ってば、結局寝ちゃってるんだから」
チラリと振り向くと、ベッドで眠る圭介が見える。
今夜は話があるって言ってたのに、寝てしまったんじゃ意味がない。
一体、何を話したかったんだろう。
別れたいって話じゃないぽいけど…。
「なんか、疲れたなぁ」
このマンションに、栞里さんも来たことがあるのかとか、あのベッドで圭介と抱き合ったのかとか、いろいろ考えてしまってため息が出る。
やっぱり、ここへ来るのはしばらくやめよう。
冷静になってからでないと、息苦しいばかりだ。
それに、こんな状況になっても、わたしは圭介が好きだから。
嫌いになりたくなくて、距離を置く。
そう決めたのだった。