優しいカレの切ない隠し事
聖也の告白
「もしもし、陽菜?悪いな朝から。実は、今夜空いてたら付き合って欲しくて」
「えー?そういう話をここでしないでよ」
思わず受話器を手で覆ったじゃない。
だいたい、プライベートな話を会社でする!?
呆れたその時、これみよがしに聖也はため息をついたのだった。
「あのな、オレがそんなに見境のない人間に見えるか?接待だよ、接待」
「接待?」
「そう、接待。今日は、新しく出来る系列旅館のお披露目会でさ。来てくれるだろ?オレの職権乱用で、編集者はお前だけだから」
接待か…。
新しい旅館の話なんて聞いてもなかったけど、うちにだけ独占取材をさせてくれるなら、ありがたい。
「うん。喜んで行く」
「よし、決まり!じゃあ、19時にこっちへ来て」
聖也は張り切って時間を告げると、電話を切った。
「はぁ…。嬉しいけど、ちょっと憂鬱」
接待ともなると、圭介に報告しておかないといけないのよね…。