優しいカレの切ない隠し事
「おーい!陽菜!」
会社のビルを出た瞬間、路肩に停めてある車から、聖也が顔を覗かせた。
「聖也!?もしかして、迎えに来てくれたの?」
まさか、ここまで来ているとは思わなかったから、驚きで変なテンションになる。
「ああ、今日は新しい旅館に行く前に、ちょっと寄って欲しいところがあってさ。迎えに来たんだよ。ほら、乗って」
「う、うん」
言われるがまま車に乗り込むと、聖也はさっそく車を走らせた。
「来てるなら、来てるって言ってよ。すれ違ったら、どうするつもりだったの?」
夜の街を軽快に走らせる聖也は、ご機嫌がいいらしい。
いかにも上機嫌といった口調で、笑いながら答えてくれた。
「大丈夫だよ。オレは、絶対に会えると思ってたから」
「もう…」
変なところで自信家なのは、今も昔も変わらない。
クスッと笑いが出たところで、外の景色が気になった。
「ねえ、一体どこへ行くの?」