優しいカレの切ない隠し事


寄って欲しいところとは、どんなところなんだろう。

すると、聖也の顔は真顔に戻っていた。

「オレの実家。陽菜には着物を着て欲しいんだ」

「えっ!?実家?着物?」

そんな、とんでもない。

聖也の実家なんて、絶対にごめんだ。

「困るよ。今さら、実家には行けない。それに、着物だって困るもん…」

「大丈夫だよ。着物はレンタルものだから。それに、着替えがうちでしか出来ないんだよ」

「だからって、当然お母様もいらっしゃるんでしょ?会えないって」

なんとか阻止しなければ。

お母さんに会うのだけは勘弁だ。

「母さんならいるかもな。だけど、何でそんなに嫌がるんだよ?付き合ってた頃にも会ってたろ?」

「それは…」

聖也には、本当の話をしていないのだから、こんな風に言われても仕方ない。

だけど、わたしには、お母さんと会えない確固とした理由があるのだった。
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