優しいカレの切ない隠し事
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仕事終わりは、早ければ21時頃。
締め切り前は徹夜もザラにあり、それを思えば今はかなり余裕のある時期だ。
こんな日は、圭介のマンションへ行くことが日課になっている。
わたしのマンションは、圭介とは反対方向にあり、会社から少し遠い。
だけど圭介のマンションは、会社からも歩ける中心地にあり、仕事が終われば堂々と、一緒に帰っているのだった。
そして、今夜も圭介のマンションへ行く日。
いつかは同棲が出来たらいいなと、思っているのだ。
だけど、まだそのお誘いは無い。
「ただいまぁ」
ここの玄関ホールは、入るとすぐに自動で明かりが点く。
分かっていることだけど、毎回この便利さには感心するのだった。
「お疲れ、陽菜。もう少ししたら、また忙しくなるな」
リビングへ向かい、圭介はスーツのジャケットを脱ぐと、ネクタイを外そうとする。
だけど、それより先に駆け寄ると、わたしがそのネクタイに手をかけたのだった。
だって、圭介のネクタイを外すのは、わたしの役目だから。