優しいカレの切ない隠し事


ーーーー
ーーー

仕事終わりは、早ければ21時頃。

締め切り前は徹夜もザラにあり、それを思えば今はかなり余裕のある時期だ。

こんな日は、圭介のマンションへ行くことが日課になっている。

わたしのマンションは、圭介とは反対方向にあり、会社から少し遠い。

だけど圭介のマンションは、会社からも歩ける中心地にあり、仕事が終われば堂々と、一緒に帰っているのだった。

そして、今夜も圭介のマンションへ行く日。

いつかは同棲が出来たらいいなと、思っているのだ。

だけど、まだそのお誘いは無い。

「ただいまぁ」

ここの玄関ホールは、入るとすぐに自動で明かりが点く。

分かっていることだけど、毎回この便利さには感心するのだった。

「お疲れ、陽菜。もう少ししたら、また忙しくなるな」

リビングへ向かい、圭介はスーツのジャケットを脱ぐと、ネクタイを外そうとする。

だけど、それより先に駆け寄ると、わたしがそのネクタイに手をかけたのだった。

だって、圭介のネクタイを外すのは、わたしの役目だから。
< 11 / 192 >

この作品をシェア

pagetop