優しいカレの切ない隠し事
「それがさ、花井旅館は海外進出を企画してるだろ?そのことで、いろいろアドバイスが欲しいらしいんだ」
「アドバイス…?」
そうか。
海外に詳しい圭介になら、情報を聞きだせるって思ったんだわ。
それに、いずれは海外勤務も目標にしてるわけだし。
「それで急きょ来ることになったから、陽菜に連絡したんだけど、さっきは電話切ったろ?心配したんだからな」
「あ、ごめん…。かけ直そうとして、タイミングを逃しちゃって」
聖也とのキスに、いまさらながら罪悪感を覚える。
それにしても、圭介があまりに普通に話してくるから、ケンカしてることも忘れそうだ。
「なあ、陽菜。オレたち、こうやって仕事の時の方が、うまくいくのかもしれないな」
「え?」
「陽菜の置き手紙、ちゃんと読んだよ。距離を置きたいって気持ち、受け入れるから」
「圭介…」
穏やかな笑みを浮かべる圭介に、わたしは複雑な思いでいっぱいだった。