優しいカレの切ない隠し事


これで少しは、栞里さんとのことも、頭の中で整理出来るかもしれない。

といっても、やっぱりちゃんと聞かないと何も分からないか…。

聖也にも、3年前の話をすると約束したし、圭介ともきちんと話をしないといけないんだ。

知る勇気を持たなきゃ。

「ねえ、圭介…」

と、声をかけた時だった。

「松山課長」

嫌な懐かしさが込み上げる声がして、思わずわたしも振り向いた。

「あら?もしかして、陽菜さん?そうよね?まさか、今夜いらしてたなんて」

品のいい着物を着て、微笑みながらも冷たい視線を向けるその人は、わたしが最も会いたくない人、聖也のお母さんだった。

「お久しぶりです、おばさま。今夜は、取材で参りました」

声が震えるし、顔が強張る。

「あら、そう。どうやら、また聖也が勝手なことをしてるみたいよね?松山課長、こちらへ。お仕事の話がしたいですから」

聖也のお母さんは、圭介を他の場所へと促す。

心配そうな視線を向ける圭介に、わたしは小さく微笑むしかなかった。
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