優しいカレの切ない隠し事
二人が去ってから、どっと疲れが出てくる。
最後のお母さんの言葉、『仕事の話をしたい』は、わたしに対する完全な嫌みだ。
もう、わたしと会話はしたくない、それを遠回しに言ったに違いない。
「ホント、いつ会っても威圧感たっぷりな人だわ」
圭介の話がどれくらいかかるか分からないし、聖也も忙しそう。
一通り取材は終えたし、もう帰ろうかな…。
着物は後で返せばいいだろうし。
こうやってお母さんと再会した以上、やっぱり隠し通すことは無理だと分かった。
「あーあ、何でこんなことになっちゃったんだろ」
ため息を一つつき、旅館を後にする。
もちろん、その後、圭介と聖也から電話がかかってきた。
圭介は、取材の出来を聞いてきて、聖也は次に会う約束を取り付けてきたのだった。