優しいカレの切ない隠し事
「花井、ちょっといいか?」
「はい」
あの旅館の取材以来、圭介はわたしと距離を置いてくれている。
いつかの様な切羽詰まった感じもなくて穏やかだ。
だから、わたしも『部下』として、当たり前に接していた。
ただ、栞里さんには相変わらずぎこちない態度を取ってしまっているけど…。
「この記事な、1ページ増やそうと思うんだ。花井旅館の記事は目玉だから」
「そうですね。分かりました」
なんだかんだ言って、花井旅館の担当は、わたしが専任でやらせてもらっている。
その代わり、初姫神社の記事は、栞里さんに取られてしまったけれど…。
それにしても圭介は、いつまでこの関係を続けるのだろう。
そして、どんな答えを出すのだろう。
こうやって会社で会えば嬉しくて、距離を置いている今を切なくも思えて、心をスッキリさせたい。
「課長、少しお話いいですか?」
今夜は聖也と会う。
3年前の真実を話して、次は圭介の番だ。