優しいカレの切ない隠し事
店を出てからも、聖也はよほど納得がいかないのか、ブツブツと文句を言っていた。
そしてタクシーを拾ってくれると、別れ際にわたしに言ったのだった。
「オレ、松山課長と直接話をしてもいい。簡単に、陽菜のことを諦めきれるわけないから」
そしてタクシーは、そのまま走り出してしまい、わたしから返事は出来なかった。
「困ったな…」
これは、聖也とキスをして、圭介を裏切った報いなの?
元サヤに戻りたいなんて簡単に思っていたわたしに、罰が下ったのかもしれない。
だけど、それもそうだよね。
こっちは圭介という新しい彼氏を見つけて幸せかもしれないけど、聖也はずっと苦しんでいたんだから。
それだけじゃない。
聖也はこれから先、背負うものが大きすぎる。
誰かと一緒にいたいと思って当然なんだ。