優しいカレの切ない隠し事


圭介の部屋は、しばらく足が遠のいていたけど、綺麗に片付けられていて、いつ来ても安心する。

自然と二人でソファーに座ると、最初に口を開いたのは圭介だった。

「単刀直入に言うよ、陽菜。栞里との仲、疑ってるだろ?」

真っ先に核心に触れられ、小さく頷くしか出来ない。

やっぱり、圭介は気付いていたんだ。

そして、もちろん栞里さんも。

そんなわたしに、圭介は優しく問いかけてきた。

「何で?」

外の騒音も聞こえないこの部屋じゃ、今は沈黙が息苦しい。

きっとそれは圭介も一緒で、だから会話を急ごうとするのかも…。

「わたしね、見ちゃったの。圭介と栞里さんが、初姫神社でキスしてるところ」

あの光景は、今でもハッキリ思い出すことが出来る。

そして、心から苦しくなる。

それを聞いた圭介は、ソファーにもたれる様に、大きくため息をついたのだった。

「そっか…。見られてたのか」
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