優しいカレの切ない隠し事
もしかしたら、わたしこそ圭介に不安を抱かせているのかも。
栞里さんと付き合っている時は、それだけ仕事に集中出来てたってことよね?
結果はどうであれ、栞里さんはその環境を作っていたんだわ。
それに比べてわたしは、栞里さんほどの余裕を、圭介に感じさせていないに違いない。
「圭介、わたしやっぱり同棲は無理!ていうか、同棲しなくても大丈夫」
「えっ?」
「ロンドン勤務の話があるんでしょ?栞里さんから聞いた。だから圭介は、それに集中してね」
そうよ!
わたしも、それくらい余裕を持たないといけなかったんだわ。
聖也とのことは、また様子を見て話すかどうか決めるとして…。
キッチンを後にしたわたしは、バッグを手に取ったのだった。
「陽菜?何で、バッグなんか持ってるんだよ」
うろたえる圭介に、わたしはキッパリ答えた。
「帰るの。おやすみ、圭介」