優しいカレの切ない隠し事
圭介は、そのままわたしを抱きしめた。
「圭介…?」
「本当は今夜、ロンドンの話をしようと思ったのに。陽菜が悪いんだぞ」
「ロンドンの話?それ、わたしも聞こうと思ってたの」
それなのに、すっかり違うことに意識が向いていたなんて情けない。
だけど圭介は、その話をする代わりに、唇を重ねてきたのだった。
「ん…。圭介…。キスなんてしてたら、話にならないじゃない」
軽く押し返すと、その手は余裕で止められた。
「そうだな。話にならないな」
言葉ではそう言うくせに、圭介はキスを止めない。
「ね、ねえってば。本気で話そうよ」
舌を絡ませるキスに、わたしの頭はクラクラしてきた。
「陽菜が悪いって言ったろ?」
そう言ったかと思ったら、圭介はわたしをその場に押し倒したのだった。
「ちょ、ちょっとここで!?」
「どこでもいいだろ?」
今夜の圭介は、いつもの圭介らしくない。
だけど、そんなカレにもときめいていた。