優しいカレの切ない隠し事


「お、おはよう。陽菜」

朝ご飯を食べていると、気まずそうに圭介が起きてきた。

スーツを着て、すっかり身支度を整えている。

「おはよう、圭介。よく寝てたね」

「ああ、すっかり寝てたみたいだな。オレも、ご飯もらおうかなぁ」

わたしの隣に座った圭介は、こちらの様子を伺いながら、トーストを口にした。

ゆうべの圭介は、本当に寝落ちだったらしい。

おかげで、ロンドンもプロポーズも全然話が進まなかった。

圭介はそれを気にしているのか、今朝は隣に座るという分かり易い行動をしている。

「なあ、陽菜。ゆうべの話なんだけど…」

きた!

絶対に朝言うと思ってたのよね。

「うん、何?」

「ロンドン勤務は、総合評価で決まるんだ。オレの場合は、情報誌の部数を伸ばして、その中身を厚いものにする。とにかく、その成果をあげることなんだ」

部数を伸ばす…?

ということは、売れる雑誌を作ればいいってことよね?

「分かった。圭介、わたしも頑張るから!」

突然立ち上がったわたしを、圭介はキョトンと見上げている。

「いや、陽菜がそんなに息巻かなくてもいいんだよ。それより大事な話が…」

そう言いかけた圭介を置いて、すぐに出勤の準備をしたのだった。
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