優しいカレの切ない隠し事


圭介と別れる?

「そんなこと、出来るわけないでしょ!!」

思わず立ち上がり声を上げたわたしに、聖也は平然とした顔を向ける。

「オレの時はやってくれたろ?意に沿わなくても別れたじゃないか。同じことをやってくれって言ってるだけだよ」

「本気なの?聖也ってば、いつの間にそんな人になっちゃったのよ」

「オレは昔から変わってないよ。それだけ陽菜を手離したくなかった。どんな手を使ってでも、取り戻したいって思ってるから」

だからって、別れろだなんて、そんな条件が飲めるはずもない。

「無理よ。そんなこと出来ない」

きっぱり言い放つと、聖也はしれっと言ったのだった。

「実はさ、最初の海外挑戦はロンドンでって思ってるんだ。もし陽菜が条件を飲んでくれるなら、ロンドン支社とも契約したっていいんだけどな」
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