優しいカレの切ない隠し事
わたし次第…?
聖也の言葉は、頭の中にかなり残ってしまった。
そのせいもあってか、答えを保留にしたまま旅館を後にしたのだった。
「保留にするわたしもどうかしてる…」
あんなメチャクチャな条件、飲めるはずないじゃない。
だけどもし、本当に聖也が約束を守ってくれるなら…?
それで圭介の夢が叶うなら、どうする?
ーーーー
ーーー
「おかえり」
会社に戻り廊下を歩いていると、給湯室から圭介が声をかけてきた。
「ただいま…」
圭介はインスタントコーヒーを飲みながら、わたしの顔をジッと見ている。
「どうかしたか?今朝、もの凄い勢いで飛び出た割には、元気なく帰ってきたな」
「うん…。ちょっと…」
とても、話せるわけない。
それにしても、圭介と別れるなんて、本人を前にすると、ますます想像が出来なかった。
「仕事の悩みか?オレの夢を叶えるとか言ってたけど、陽菜が息巻く必要ないんだから。あんまり、張り切り過ぎるなよ?」