優しいカレの切ない隠し事


わたし次第…?

聖也の言葉は、頭の中にかなり残ってしまった。

そのせいもあってか、答えを保留にしたまま旅館を後にしたのだった。

「保留にするわたしもどうかしてる…」

あんなメチャクチャな条件、飲めるはずないじゃない。

だけどもし、本当に聖也が約束を守ってくれるなら…?

それで圭介の夢が叶うなら、どうする?

ーーーー
ーーー

「おかえり」

会社に戻り廊下を歩いていると、給湯室から圭介が声をかけてきた。

「ただいま…」

圭介はインスタントコーヒーを飲みながら、わたしの顔をジッと見ている。

「どうかしたか?今朝、もの凄い勢いで飛び出た割には、元気なく帰ってきたな」

「うん…。ちょっと…」

とても、話せるわけない。

それにしても、圭介と別れるなんて、本人を前にすると、ますます想像が出来なかった。

「仕事の悩みか?オレの夢を叶えるとか言ってたけど、陽菜が息巻く必要ないんだから。あんまり、張り切り過ぎるなよ?」
< 164 / 192 >

この作品をシェア

pagetop