優しいカレの切ない隠し事
「キスって、こんなに息が切れるものだっけ?」
ようやく唇が離れ、気恥ずかしい気持ちで圭介を見上げると、口角を上げて優しく微笑む笑顔が見えた。
「陽菜が話してくれて、ようやく理解出来たよ。聖也さんが、何であんなことをしたのか」
「あ…。ごめんね。本当に、ごめんなさい。全部、わたしのせいなの」
聖也の名前が出てきて、すっかり現実に返ってしまった。
なんとしてでも穴埋めをしなければ、圭介の海外勤務のチャンスを逃しちゃう。
だけど圭介は、それまでと違って穏やかな顔をしていた。
「陽菜のせいじゃないよ。責任なんて感じる必要ない。どうせ、初姫神社の取材だって、オレの海外勤務の為に…って思ってるんだろ?」
「そ、それは…」
さすが鋭い。
「あのさ、確かにオレは出世欲まみれだったよ。だけど、陽菜と出会って少し変わったことがあるんだ」