優しいカレの切ない隠し事


「えー。研修なんて、最悪」

深いため息と共に、思わずデスクに突っ伏してしまった。

中途入社のわたしには、何かと研修があるのだ。

だけど、本社での研修はこれがまだ二回目。

最初は入社したてで、よく分からないまま受けたのを覚えてる。

「忙しいのになぁ。本社とか緊張するから嫌なんだけどなぁ」

もう一度ため息をつきながらメールの中身を見ていると、最後に書かれていた送信者の名前で目が止まった。

「浅井…涼太?」

今回の研修者って、栞里さんの彼氏さんなんだ。

名前は知っているものの、顔を見たことはない。

どんな人なのか、想像するだけでワクワクする。

「コラ、まだ仕事中だろ?」

デスクに突っ伏しているわたの頭を、いつ戻ったのか圭介が軽く小突いた。
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