優しいカレの切ない隠し事
顔を上げると、呆れ顔を向けられてしまった。
「課長、研修なんですよ。わたし…」
「研修?じゃあ、オレのところにもメールが来てるかな?」
デスクへ真っ直ぐ向かう圭介の後をついて行く。
そして、メールのチエックをしていた圭介はニヤリとした。
「頑張ってこいよ。研修は大事だから」
こういう時の圭介の顔は、本当に楽しそうだ。
まさに今、部下をからかう上司の顔になっている。
「はぁい。だけど、今回はちょっと楽しみかもしれないです」
「楽しみ?」
「はい。だって、オブザーバーは栞里さんの彼氏さんですから」
耳元で囁くと、圭介の顔色が変わった。
「課長?どうかしました?」
まさか、すごく厳しい人とか?
一人青ざめるわたしに、圭介はすぐに笑顔を戻したのだった。
「いや、何でもないよ。頑張ってな、研修。どんなことをしたか、報告待ってるよ」
「はぁい」
変なの。
圭介といい栞里さんといい、今日は様子がおかしい。