優しいカレの切ない隠し事


親会社の 本社は、オフィス街のど真ん中にあり、近代的なグレーのビルの3フロア分を取っていた。

50階建てのビルで、研修場所は45階にある。

眺めはもちろんいいけれど、あまりに高すぎて、周りの建物が小さく見えるほどだ。

「『陽菜ちゃん』だよね?栞里と圭介から、話は聞いてるよ」

大きな窓のある研修室は、6人程度が入れる広さで、解放感たっぷりの明るい部屋になっている。

そこの長テーブルで待っていると、涼太さんが入ってきたのだった。

「あの、よろしくお願いします!」

慌てて立ち上がると、頭を下げた。

それにしても、初めて見る涼太さんは、想像以上にカッコイイ。

圭介と同じくらいに背が高く、体つきもガッシリとしている。

ハッキリとした顔立ちで、圭介が甘いルックスなら、涼太さんはワイルドな雰囲気だ。

これなら、二人がライバルなのも頷ける。

こんなに何もかも張り合える同期も、そうはいないだろうから。
< 34 / 192 >

この作品をシェア

pagetop