優しいカレの切ない隠し事


すると、涼太さんはまるで表情を変えることなく、わたしに研修用の資料を手渡しながら言ったのだった。

「聞いてたよ。あいつ、恋愛に関してはオレにあれこれ言いたいらしいから」

気のせいじゃなければ、なんだかさっきから、涼太さんはトゲのある言い方をしてる。

もしかして、圭介のことを好きじゃないのかな?

思い切って、聞いてみようか。

「栞里さんから聞いたんですけど、圭介とライバルって本当ですか?あまり、仲が良くないとか?」

仲が良くないなら、圭介がこの研修のオブザーバーが涼太さんだと知って、顔色を変えた理由も分かる。

「栞里がそんな風に言ったんだ?」

短くため息をついた涼太さんは、わたしをチラリと見た。

どこか冷たい視線に、物怖じしてしまいそうになる。

「はい…。仲が良くないって思ったのは、涼太さんの口ぶりから勝手に思ったことですけど」

「そうだなぁ。陽菜ちゃんの勘は当たってる。だけど、圭介はもっとオレが嫌いだと思うよ」
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