優しいカレの切ない隠し事


研修から戻ると、オフィスは原稿の締め切り前でピリピリムードになっていた。

そんな中でも、栞里さんは笑顔で声をかけてくる。

「陽菜ちゃんお帰り。ほら、見て。この間の初姫神社の記事、どうかな?」

「え?もう下書きが出来てるんですか?」

一体、いつの間に作ったのか。

写真も選別されている。

「陽菜ちゃんがいない間、課長と作ったのよ。取材に行ったのは陽菜ちゃんだし、気になるところがあれば言って」

「はい」

受け取った下書きは、見事なまでにまとめられていて、わたしが指摘するものなんてなかった。

「課長、この仕上げですが…」

栞里さんは別原稿を持ち、圭介と確認している。

「出遅れた感じ…」

圭介と栞里さんが作った記事は、縁結びと子宝祈願の神社として、カップルや女性が目に引く仕様になっていた。

二人で、これを作ったんだ…。

ページの終わりにあった絵馬の写真には、ハートの飾りがつけられている。

仕事だと分かっているのに、うっすら沸く嫉妬の感情。

初姫神社の記事は、わたしが圭介と作りたかったのに…。
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