優しいカレの切ない隠し事


「もしもし、圭介?どうしたの?」

外に目を向けると、陽は半分落ちていて、空はオレンジ色に染まっている。

戻ってから、ずっと眠っていたらしい。

「起きたら陽菜がいないんだから、ビックリしたろ?どこにいるんだよ」

圭介も十分休めたのか、声が元気になっている。

「自分のマンション。圭介ってば、ベッドに入ってすぐに寝たから、そのまま帰ったの」

「何だよ、それ。陽菜と一緒に寝たかったのにな」

電話越しにため息をつく圭介が、何だか可愛い。

そう思う時、10歳という年の差を忘れている。

「まあまあ、寝不足だったんだし、ゆっくり出来る日があってもいいじゃない。また明日会おうね、圭介」

仕事があるのだから、また会える。

そう思って電話を切ろうとした時、ボソッと声が聞こえてきたのだった。

「会いたい…」

「え?」

「陽菜に会いたい」
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