優しいカレの切ない隠し事
ゆっくりと夜の街を歩きながら、わたしたちの別れる通りまで着いた。
ここからは、反対方向に帰らないといけない。
わたしだって、本当は一緒に帰りたいけど、これも一種の駆け引きだ。
名残惜しい距離を保つという…。
「じゃあね、おやすみ圭介」
笑顔を向けたけど、圭介はいつになく神妙な面持ちをしている。
「どうしたの?」
「あのさ、陽菜」
息を飲んだ圭介は、その次には何かを決心したように、大きく息を吸い込んだ。
「オレたち、同棲しないか?」
「えっ?同棲…?」
思いがけない言葉に呆然とする。
「そう、同棲。陽菜はオレのマンションにいることが多いんだし、いい加減一緒に暮らしてもいいんじゃないかって思ってさ」
「あ、ありがとう…。だけど、今はまだ考えられないかな。自由に圭介の部屋へ行けれるだけで十分なの。ごめんね、また明日」
ほとんど逃げるように去ってしまったわたしの後ろから、圭介の声がした。
「あ、おい!陽菜!」