優しいカレの切ない隠し事


ごめんね、圭介。

走りながら、心の中で繰り返す。

同棲だなんて嬉しすぎて、本当は心臓がバクバクだ。

だけど、それを断った理由はただ一つ。

同棲をすると、プロポーズを貰うのが遅くなるから。

もちろん、何の根拠もないと言えばない。

ただ、わたしが知ってる限り、同棲をした友達で結婚まで辿り着いたカップルはいないのだ。

みんなが言うには、同棲と彼氏の部屋へ行くのでは、レベルが違うらしい。

同棲は本格的な『生活』で、それこそゴミの分別の仕方とか、細かい部分の違いが大きな溝になるとか。

だから、わたしは圭介とは同棲しないと決めてるのだった。

「でも、だからって、今の態度は無かったかなぁ…。怒っちゃったかも」

自己嫌悪で深いため息が出る。

そんなわたしに、圭介はそれから一時間後、メールを送ってくれたのだった。

『おやすみ、陽菜。また明日会えるのが待ちきれないよ』
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