優しいカレの切ない隠し事
けたたましく鳴り響く電話の音。
雑誌の締め切り後にしては、出勤早々、朝からオフィスが騒がしい。
「一体、何があったんですか?」
先輩編集者さんに尋ねると、眉を下げて小声で話してくれた。
「内田さんのミス。雑誌の発注が桁違いに間違ってて、書店に出回ってないらしいのよ」
「えっ?栞里さんがミス?」
何て珍しい。
わたしが知ってる限りでは、栞里さんが凡ミス以上のミスをしているのを見たことがない。
「だけど、発注ってだいたい毎回決まってるし、印刷会社からの問い合わせは無かったんですか?」
発行される前に、気付かれてもよさそうなのに。
すると、先輩編集者さんは首を横に振ったのだった。
「それが、運悪く今回から担当者さんが異動で替わってたのよ」