優しいカレの切ない隠し事
「栞里さん、わたしニヤけてました…?」
恥ずかしさで少し俯きながら、チラリと栞里さんに目を向けた。
「してた、してた。松山課長と付き合って、本当に陽菜ちゃん幸せそうだよね」
笑いながら栞里さんは、原稿の整理をしている。
栞里さんは、わたしの教育担当で、入社した時から仕事を教えてくれている人
だ。
厳しさの中にも優しさがあって、美人で知的で、それでいて明るい理想の女性。
わたしより5歳年上とは思えないくらい若々しくて、可愛らしい雰囲気も持ち合わせている人なのだ。
「栞里さんだって、本社に恋人がいるんですよね?思い出したらニヤニヤしません?」
そう。
栞里さんには、本社の海外事業部に所属する恋人がいる。
確か、圭介とは同期で、名前を浅井涼太(あさい りょうた)っていったっけ?
「涼太のこと?わたしたちは付き合って2年近くになるし、そんなんじゃないのよ。だから、陽菜ちゃんが可愛い」