優しいカレの切ない隠し事
当の栞里さんは、別室で圭介と話をしていたらしく、姿を見せたのはそれから1時間ほどしてだった。
「課長、本当にすいませんでした」
憔悴しきった栞里さんに、圭介は首を横に振った。
「誰にでもミスはあるよ。それより、今日はオレもついて行くから、得意先に謝りに行こう」
「はい…」
さすが、圭介は頼りになる上司だけど、今は栞里さんの方が気にかかる。
「あ、陽菜ちゃん。おはよう。ごめんね、朝から迷惑かけて」
デスクへカバンを取りに来た栞里さんは、弱々しい笑顔を向けた。
「やめてください。迷惑なんて、かかってません」
わたしの今までのミスに比べたら、なんてことはない。
だけど、栞里さんはただ笑みを見せるだけで、カバンを手に取り圭介のデスクへ急いだのだった。