優しいカレの切ない隠し事
すれ違い


自分のマンションへ帰り、茫然自失で座り込む。

何をするべきか、何をしたいのかが分からないくらいに、衝撃を受けていた。

圭介と栞里さんへの腹立たしさもあるけど、二人を好きな気持ちもウソじゃない。

そんな真反対の気持ちを、苦しく感じていたのだった。

「あの二人に、どんな秘密があるんだろう…」

無意識に呟いたその時、スマホの着信音が鳴り我に返る。

確認すると、それは圭介だった。

「圭介…」

出たいような出たくないような複雑な気持ちで取る。

すると、いつもと変わらない明るい声が聞こえてきたのだった。

「陽菜?今どこだ?会えるなら、会いたいんだけど」

わたしに会いたい?

栞里さんを抱きしめた後に、よくそんなことが言えるものだわ。

本当に、そう思ってるわけ?

「わたしは、会いたくない。だいたい、圭介は忙しかったでしょ?今夜はゆっくりした方がいいよ」

自分でも驚くくらい、ぶっきらぼうな言い方をしてしまった。
< 56 / 192 >

この作品をシェア

pagetop