優しいカレの切ない隠し事
真っ暗になったスマホの画面に、わたしの泣き顔だけが映る。
「どうして?何でウソをつくの?」
ポロポロとこぼれる涙を、拭う気力もない。
と、その時玄関のチャイムが鳴ったのだった。
「誰?」
こんな時に、一体誰よ。
重い腰を上げモニターを確認すると、それは圭介だった。
「圭介…」
少し息が切れているところを見ると、走って来てくれたのかもしれない。
それは切ないくらいに嬉しいけど、鍵を開けることも、モニターに応答することも出来なかった。
「陽菜、いるんだろ?」
インターホン越しに聞こえる圭介の声に、応えられない自分が嫌だ。
だけど、隠し事をしているのは圭介の方だもん。
どうしても、今は会いたくない…。