優しいカレの切ない隠し事

『そんなんじゃない』か。

わたしも、いつか圭介に対して、そんな余裕を言える様になるのかな…。

「わたしは逆に、栞里さんが羨ましいです。いつかは、そんな風に言ってみたいな」

「陽菜ちゃんは、陽菜ちゃんらしく恋すればいいのよ。それに、社内公認カップルなのに、ちゃんとプライベートと分けられてる、それもわたしが陽菜ちゃんを感心してる理由だから」

「そんな…。それを言うなら栞里さんだって…」

と言ったところで、後ろから人の気配がした。

「ほら、口ばかり動かさないで手も動かして」

「あ、課長。すいません」

いけない。

圭介に注意されちゃった。

肩をすくめるわたしに、栞里さんは苦笑いを浮かべる。

栞里さんは、プライベートと分けられてるなんて言ってたけど、本当は毎日ドキドキだ。

会社でも圭介に会えることが嬉しくて、浮き足立っているのを隠すのに必死だから。