優しいカレの切ない隠し事
そりゃあ、そうだ。
わたしが二人を目撃していたなんて、圭介は夢にも思っていないはず。
どうしてわたしが避けてるか、分からないのは当然だ。
「陽菜、オレが同棲しようって言ったのが気に障った?」
「えっ!?」
圭介は前を向いたまま、表情を硬くしている。
「そういうわけじゃないよ。何で、そんな風に思うの?」
同棲はむしろ嬉しいくらいだったけど、プロポーズが遠のくが嫌で断っただけだ。
だけど、今はそれどころじゃない状況に陥っている。
「だって、即答で拒否したじゃないか。陽菜の様子がおかしいのは、それからだし…」
「それは…」
『様子がおかしい』か。
表に出るわたしと違って、圭介は本当に隠し事が上手だ。
栞里さんとあんな事をしておいて、わたしを責めるんだもんね。
黙ったままのわたしに、圭介はそれ以上何も言わなかったけれど、握った手は離さないままだった。